会社を設立する場合、一般的に司法書士や行政書士、税理士に依頼することが多いと思いますが、必ずしも専門家に依頼する必要はありません。
少し面倒ではありますが、実は自分でも手続きを行う事ができて、意外と簡単だったりします。
登記の専門家の司法書士に依頼したときの報酬は5~10万円かかりますが、この費用を節約できるのが一番のメリットです。
会社を設立するときには必ず定款を作成しなければなりませんが、定款は作成して終わりではなく、公証人の認証を受けて完成します。
★本記事の内容★
会社設立の流れ
定款に必ず記載しなければならない事項
よく耳にする公開会社とは
定款の作成から認証の方法
この記事は「自分でも簡単にできる会社の設立」をテーマにしていますので、最後まで読んでいただくと、会社設立の定款の作成から認証まで、一通りの流れとやり方が理解できると思います。
目次
会社を設立するまでの流れ
会社の設立の手続きを大まかに分けると、次の4つのステップになります。
定款の認証
登記に必要な書類の作成
登記申請
この記事ではこの流れに沿って、定款の作成と認証についてお話します。
定款の作成
会社の設立にあたって一番のポイントになる定款の作成ですが、これさえ出来上がってしまえば、全体の6割くらいは終わったようなものです
定款とは会社の根本規則を定めたもので、会社の設立にあたっては、必ず公証人の認証を受けた定款が必要になります。
定款には必ず記載しなければならない事項が法律で定めれていますので、この記載がない定款は公証人から認証をもらう事ができません。
これらは絶対的登記事項と言われていて、次の5つの項目があります。
また定款の絶対的記載事項とはされていませんが、株式会社は設立時までに発行可能株式総数を定めなければなりません。
絶対的記載事項
定款に記載しなければならない5つの項目は、以下のようになります。
目的
商号
本店の所在地
設立に際して出資される財産の価額またはその最低額
発起人の氏名または名称及び住所
目的
定款には、会社が行う事業活動の目的を定める必要があります。
逆に言うと、目的に定めていない事項は行うことができず、仮に定款に定めのない新規事業を始める場合には、定款の変更をしなければなりません。
商号
会社の顔となる名称を記載します。
株式会社○○や○○株式会社など、名称と合わせて必ず会社形態(株式会社・合同会社・合資会社・合名会社)を表記しなければなりません。
本店の所在地
本店の所在地は、最少行政区画である市町村、東京都の場合は区まで記載すれば問題はありません。
番地まで記載してしまうと、本店としている事務所が引っ越した場合、定款の変更が必要になります。
設立に際して出資される財産の価額またはその最低額
資本金に近い意味合いですが、少し違います。
出資される財産の最低額のラインを定款で決めておいて、それ以上の額が出資されていれば設立手続きに支障はありません。
もちろん具体的に○○円としても構いませんが、定款の認証を受けた後で出資財産の額を変更する場合、定款の変更が必要になってしまいます。
発起人の氏名または名称及び住所
発起人とは会社の考案者として出資し、定款の作成や会社の設立手続きを行う者です。
ほとんどの中小企業では発起人=社長(代表取締役)となるケースが多いですが、必ずしもイコールではありません。
個人でも法人でもなることができますが、法人の場合は、名称および住所を記載します。
以上が定款で必ず定めなければならない絶対的記載事項と言われるものですが、実務上はこの他にも色々なことを定款で定めたりします。
また必ずしも定款で定める必要はありませんが、定款に記載しなければ効力が認められない相対的記載事項と呼ばれるものがあります。
相対的記載事項
定款に記載しなければ効力が認められない相対的記載事項には、以下のものがあります。
- 現物出資
- 財産引受
- 発起人の報酬
- 設立費用
- 株式の譲渡制限に関する規定
- 株主総会の招集通知を出す期間の短縮
- 役員の任期の伸長
- 株券を発行する場合の定め
- 取締役会設置の有無
- 監査役設置の有無
- 会計参与設置の有無
- 監査役会設置の有無
このうち現物出資、財産引受、発起人の報酬、設立費用の4つは変態設立事項と呼ばれていますが、この定めがある場合には、検査役と呼ばれるものの検査を受けなければなりません。
このように余計に手続が煩雑になってしまうため、実務上はほとんど定めることはありません。
上記のように様々な事項が相対的記載事項とされているため、ここでは割愛させていただきますが、とりわけ重要なのは株式の譲渡制限に関する規定です。
株式の譲渡制限に関する規定
株式会社の設立にあたって、株式の譲渡制限に関する規定は非常に重要なものになります。
株式を引き受けた人が他の人に譲渡する場合に、株主総会や取締役会の承認を求め、株式の譲渡に制限を設けます。
株主は会社の経営に携わるため、全くの第三者の介入を阻止する狙いがあり、家族経営や一人会社(発起人=出資者=社長)をはじめ、ほとんどの中小企業がこの規定を置いています。
公開会社という用語を耳にしたことがある人もいるかと思いますが、これは全く株式の譲渡に制限がなく、自由に売買が認められている株式会社です。
分かり易く言うと、上場会社がその代表例です。
発行可能株式総数
株式会社を設立する場合、発行することができる株式の総数(以下「発行可能株式総数」という。)を決定しなければなりません。
発行可能株式総数を定款で定めていなければ、株式会社の成立の時までに定める必要があります。
定款の絶対的記載事項にはなっていませんので、記載がなくても公証人の認証はもらえますが、設立時までに定款で定める必要があります。
発行する株式の数
法律上、設立時に発行する株式の数は、発行可能株式総数の4分の1を下ることができませんが、設立しようとする株式会社が公開会社でない場合は、4分の1を下回ることが認められています。
株式会社を設立する際には、必ず株式を発行しなければなりませんが、この要件さえ満たしていれば、一株あたりの金額や発行する株式の数に制限はありません。
しかしながら、株式を発行して出資者を募るにあたり、資本金の額との兼ね合いをもって決定する必要があります。
資本金について
資本金は会社の規模を表し、外部からの信用の指標にもなるものですが、株主が出資した金額で成り立っています。
よって発行している株式の数と一株あたりの金額を掛けたものが資本金の額となり、出資者が数人いる場合には、それぞれの出資額に合わせて株式の数や一株の金額を決める必要があります。
会社形態について
日本の中小企業のほとんどが株式会社ですが、実はこれ以外にも合同会社・合資会社・合名会社の3つの会社形態があります。
因みに一昔前に良く見かけた有限会社は今は設立することができなくなり、現在存在しているものは、会社法が施行される2006年の前から活動している会社です。
現在ではこれに近い会社形態が合同会社ですが、株式会社の次に多く存在する会社形態です。
この二つが選ばれる理由には、社員が負う責任が有限責任であることが挙げられます。
有限責任とは、出資者が出資した先の会社が倒産したときなどに、その会社の債権者に対して、出資した額を限度として責任を負うことを意味します。
つまりは会社がつぶれたときに出資したお金は消えてしまうが、それ以上の責任を負わないということです。
合資会社と合名会社は労務や信用を出資する事も可能ですが、無限責任といった会社に対して無限に責任を負うリスクを抱えます。
よって基本的には株式会社か合同会社を設立するのが一般的となっています。
定款の認証
社会で活動する企業の根本規則となる定款ですが、内容の正当性が非常に重要になります。
この正当性を担保してくれるのが「公証人」の認証ですが、そもそも公証人の認証のない定款では、会社を設立することが認められていません。
会社は法務局に設立の登記を申請し、審査を経たのちに登記が完了することで成立しますが、ここで定款の公証人の認証の有無について調べます。
公証人の認証のない定款が添付されたものは、申請が却下される仕組みです。
定款の認証場所
定款の認証は、本社所在地と同じ都道府県内にある公証役場で行います。
定款の認証にかかる費用
定款の認証にかかる費用は、以下のとおりです。
- 公証人に支払う認証の手数料:1件につき5万円
- 登記に必要となる定款の謄本の請求手数料(定款の枚数によって総額は異なるが、およそ2000円が目安)
- 特定文書にかかる印紙税として収入印紙代4万円
電子定款の場合の費用
定款の認証はオンラインでもすることができ、この場合は収入印紙代の4万円が不要になります。
費用が抑えられるメリットがありますが、オンライン用のソフトウェアや電子定款に電子署名をするためのプラグインをダウンロードする必要があります。
必要ツールは法務省の「登記・供託オンライン申請システム」でダウンロードできますので、下にリンクを貼っておきます。
また定款の認証も同じく「登記・供託オンライン申請システム」を使用して行いますが、その後の設立の登記をオンラインで申請する場合もここから行う事ができます。
法務省の「登記・供託オンライン申請システム」はこちらから
少し面倒に感じると思いますが、操作手引書と言ったガイドラインもありますので、設立予定の会社形態に合わせた内容を選び、調べることができます。
「登記・供託オンライン申請システム」操作手引書はこちらから
簡単にできる定款の作り方
このように法務省では専門家でなくても会社の設立ができるように、様々なサービスを提供しています。
しかしながら、普段馴染みのない素人が一からやろうとすると、それなりの努力と労力が求められるのは確かです。
多少の出費を惜しまず、楽をするのであればクラウドサービスやインターネットサービスを利用する方法があります。
それでも士業の専門家に依頼するよりかは全然安くできます。
マネーフォワード 会社設立
聞いた事がある人も多いと思いますが、金融系のウェブサービスで知られるマネーフォワードが提供する会社設立のインターネットサービスです。
マネーフォワードは上場会社としての信用力もあり、安心して利用できます。
しかも会社設立に必要な書類の作成が無料(電子定款の作成代行は5,000円)でできるので、士業の専門家に数万の報酬を支払って依頼するよりもかなり安い出費です。